コラム

挑 / Creative

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アーティストリーのDNAを空間のシンボルに

今回の「挑」は、事務所改装で開発課のエリアの天井につくった、螺旋形状の造作のお話です。2本の螺旋が巻きつくような形で、コンセプトは「DNA」。デザインから設計までを担当した、開発課の佐野さんに、依頼の経緯から、製作にあたって苦労した点、仕上がりへの率直な感想までを伺いました。


完成した天井には、どんな思いを込めましたか?

コンセプトは「DNA」です。開発課はできて5年目で、会社の中ではまだ歴の浅い部署です。それでも最近は、3D職人(3Dデータを使って、図面だけではつくれない形を実現する役割)という立場が築かれてきました。

職人さんの知恵や5軸CNC(木材を立体的に削り出す機械)の知恵など、この会社にあるさまざまなノウハウが、DNAとして開発課に引き継がれ、いまの3D職人になっている。そのことを伝えたくて、このコンセプトに決めました。

どのような経緯で担当されることになったのですか?

社長からの依頼でした。今後は採用を強めていこうという方針で、事務所も手狭になっていました。以前は事務所の半分ほどが、ご飯を食べる休憩スペースだったのですが、そこを事務所に改装しようという流れです。

ちょうど私がデザインした案件のソラノキの納品を終えた頃だったので、その期待もあって声をかけてもらえたのかな、と思っています。

依頼の内容は、「3D形状で、この会社の事務所のシンボルになるようなものを」というざっくりしたものでした。具体的な要望はなく、そこからブラッシュアップを重ねていきました。

デザインは、どのように決めていきましたか?

事務所のオブジェなので、私個人のデザインよりも、この会社のデザインであることが大事だとまず思いました。そこで、社内の人にどんなデザインにしたいかをアンケートで聞き、集めたキーワードを反映しています。

アンケートでは、新しい形状、木と植物の組み合わせ、モチーフ、AIへの「無茶振り」要素の4つを尋ねました。形状は「浮遊」と「フラクタル」、木と植物は「浸食」と「共生」、モチーフは「建築」、AIへの要素は「光と影」など

それらのキーワードをAIに集計させ、下記のような発注をしてもらいました。

方針は、今までやったことのないデザインにすることでした。これまでうちがやってきたデザインをもう一度やるのは、面白くないと思ったんです。わの休憩所や愛知県庁の案件のときもそうですが、アーティストリーの強みは、やったことのないことに挑戦するチャレンジ精神だと思っています。アーティストリーらしさはありながら、全く違うものをつくりたいと考えました。

最近は、AIのパースを添えて「これはつくれますか」という見積もり依頼が増えています。スケッチの場合も含めて、基本は断りません。実現が難しそうなものを現実的な形に落とし込めるのは、うちの強みです。今回はまず集めたキーワードをAIに入力して発注書をつくらせました。そこから自分がラフにデザインし、それをAIでパース製作させることを何回も往復させることでこのこのデザインになりました。AIならではの無茶苦茶なデザインと弊社の「ART is Try」な強みが合わさって良いものができたんじゃないかなと思います。

3Dモデルを前にする佐野さん
3Dモデルを前にする佐野さん

重さと取り付けは、どう決めましたか?

私はいつも、デザインから入ることが多いです。ただ、天井に取り付けるものなので、落ちてきたら大変です。螺旋の位置の出し方や取り付け方法、重さは、しっかり考えました。

強度は、モデルから体積を出し、そこに比重を掛けて重さを求めました。軽く仕上がっていて約10kgです。これなら強度的には問題ないと判断しました。

製作中の部材を前に話す、職人さんと佐野さん

取り付けは、2本の螺旋が巻きついた形で、天井に接する部分がどちらも斜めになっています。その位置を出し、それぞれを3点ずつ天井から吊っています。3点にするとガタつきが出ない、と職人さんから聞いたからです。設計は基本的に、私から職人さんに聞きながら進めました。

製作図面

部材は、9パーツで1ユニットとなり、同じ形状の2ユニットが付いています。現場の職人さんからは「職人泣かせだ」という声も出ましたが、何だかんだ言いながら、楽しそうにやってくれている雰囲気はありました。今までできていなかったことができたと思いますし、それを実際にできる技術があるのだと、私も実感できました。

螺旋の部材を組む職人さん
螺旋の部材を組む職人
加工した螺旋の部材

設計で一番行き詰まったのは、どこですか?

ワイヤーの張り方です。ワイヤーはこのデザインの肝になる部分で、どうやって張るかが課題でした。最初は、木部に金具のリングを付けて、そこにワイヤーをくくりつける設計で出したんです。

ところが、上司の嶋村さんから「金物が見えたままでこの収まりでは汚い」と指摘がありました。会社の印象を決めるシンボルでもあるので、手厳しく言われましたね。そこから自分でもう一度考え直して、いまの形になりました。

デザインが確定した後のつくり直しはありませんでしたが、設計の途中は、行き詰まりっぱなしでした。完成した形は、当初のリングの案より、絶対にこちらの方が良かったですね。

3Dモデルで見たワイヤーの張り
3Dモデルで見たワイヤーの張り

仕上がりは満足ですか?

満足しています。ワイヤーの納まりは木栓で塞ぐことで、まるで木からワイヤーが生えているような意匠にすることができました。

もう一つは、植栽です。本当は植栽をする予定でワイヤーを採用したんですが、社内から「植栽はない方がよい、螺旋が全部見える方がよいのでは?」という意見も聞きます。自分でも、このデザインは気に入っているので、植栽がなくても綺麗かなとは思います。それでも、ホテルの案件の経験から、植栽が入ると綺麗になると感じているので、できればやりたいですね。

次に挑戦したいことは?

いま話に出ているのは、会社の入口にあるウッドデッキ、テラスの屋根を3Dにすることです。社長からもそういう話があり、事務所改装のチームの中でも、屋外もやろうという話をしています。

造作を考えている方は、相談前に何を決めておくとよいですか?

条件が最初から多すぎると、どうしてもやりづらくなります。まずは、単純にやりたいものを決めてもらうのがよいと思います。

そのうえで、デザインとして妥協したくない点を、何か所かだけ決めておいて、妥協できるところで調整していくのがいいんじゃないかなと思います。実現したいデザインを最大限再現できるように、アーティストリーの職人たちが形にします。

このような空間づくり・家具製作にご興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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