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相鉄KSビル(プロジェクトの概要)1/3

【挑】構造材を「見せる・触れる」エントランスへ ― 横浜木材×アーティストリー

今回は、横浜木材株式会社さんの自社ビル、相鉄KSビルのエントランスのお話です。横浜木材株式会社は、北米や欧州を中心とした高品質な木材の輸入・国内販売を行う、100年以上の歴史を持つ木材専門商社です。

横浜木材さんが扱うまっすぐな「構造材」が、人が座って触れる曲線のベンチになりました。

横浜木材さんにとっても、自社の木材を内装に使うのは初めてのことでした。

企画のきっかけから、置いてみて起きた変化まで、横浜木材の佐藤さん・黒川さんに、アーティストリーの嶋村と佐野が聞きました(全3回の第1回です)。


なぜ自社ビルの改修で、自社の商材である構造材を使おうと考えたのですか?

佐野:まず、構造材を“見せる・触れる”空間にしようと思った背景から教えてください。

佐藤:きっかけは、ビルを管理している会社からの提案でした。ビルも古くなってきたので改修してテナントの賃料アップを狙ってはどうか、せっかく木材の会社なのだから木を使った改修もどうか、というお話です。

木質化しようとなったとき、最初は自社の材を使う案も出ていました。ただ私たちが扱っているのは住宅に使う構造材で、内装には内装に向いた材が別にあります。正直、これは難しいかなと思っていました。

それでも自社のビルを直すなら自社が扱っている木材でやってみたい。会社として初めて自社の材を使う、ちょっとした挑戦でした。

横浜木材株式会社(左)佐藤さん・(右)黒川さん

デザインを決める過程では、採用に至らなかった案もあったそうですね。

佐藤:デザイナーさんから最初に出てきたのは、ホテルのロビーにありそうな、いかにも「木を使いました」という案でした。悪くはないのですが、「結構ふつうだな」と感じてしまったんです。

そのころから曲線がいいなと思っていました。木はもともとまっすぐではありません。それをまっすぐに切り出したものが構造材ですから、木の良さを生かすなら、木本来の形に近い曲線のほうが合うはずだと考えたんです。

その思いをデザイナーさんに伝えると、曲線のデザインにして返してくれました。ただ作り物のように見えるこの形を、本当に加工できる会社があるのか。そこで紹介していただいたのが、アーティストリーさんでした。

角材で曲線のベンチを作ることに、不安はありませんでしたか?

佐藤:ありました。自社の材で内装をやるのも初めてでしたし、家の中に使う木が人の目に触れる空間で通用するのかも分かりませんでした。しかも今回は角材です。板材のような扱いやすい材料とは違うので、この形が本当に作れるのかという不安もありました。

それが、できあがったものを空間に置いて実際に座って触れてみると、触り心地も温かさもしっかり伝わってきて、不安はそこでほぐれました。

設置してみて、想定していなかったことは何でしたか?

佐藤:置いてみて初めて気づいたことがあります。エントランスの壁は石の素材で光を反射するのですが、そこにベンチの曲線が映り込んで、8の字のようにつながって見えたんです。

空間に広がりが出て、生命力のようなものまで感じました。曲線という形は、触り心地だけでなく、エントランスという場所の印象そのものを変えるのだと実感しました。

設置前後で、エントランスの使われ方はどう変わりましたか?

佐野:実際の場の声やリアクションがあれば、聞きたいです。

佐藤:今までは何も置いていなかったので、座る人も立ち止まる人もいなかったんです。それが、ベンチを置いたら座る人も立ち止まる人も明らかに増えました。座ったり、ちょっと話したり、会議の前に準備するスペースになったり。需要があったのか、この形がそうさせたのかは分からないのですが、行動の変化は明らかにありました。

黒川:僕は出来上がったときに見に行って、1時間半くらいずっといたんですよ。そうしたら、掃除の方がいらっしゃって、普通に働いている人たちもちょっと座って休憩できたりして。面白いなと思いながら見ていました。

嶋村:実際に納品されたあとの使われ方は、僕たち普段あまり聞くことがないので、うれしいですね。

このベンチが設置されたその日から人が座っていたのですか?

佐藤:このベンチは施設が通常運用している中での施工だったため、夜から深夜にかけて作業を行いました。施工は半日ほどで完了し、翌朝にはほぼそのまま使える状態になっていました。「これはベンチです」と最初に説明したほうがいいのかな、と思っていたんです。

ところが朝10時過ぎに行ってみたら、もう座っている人がいました。何も言わなくても座ってくれる。これは本当にうれしかったですね。

佐野:ベンチと書いていないのも、いいところかもしれませんね。

佐藤:木でできていることも、思わず座りたくなる理由の一つかもしれません。

この案件を通じて、構造材の見え方はどう変わりましたか?

佐藤:自社の材を内装に使ったのは初めてでしたが、使ってみて「あ、使えるんだな」と素直に思いました。家の構造を支えている材が、内装として人の目に触れる形で使える。このプロジェクトで、構造材の新しい可能性に気づかされました。


まとめ

「せっかくなら、自社の構造材でやってみたい」。その一言から始まった相鉄KSビルのエントランスは、角材を積み重ねた曲線のベンチになりました。置いた翌朝にはもう座っている人がいて、立ち止まる人も増えた。家の構造を支えてきた材が、人の目にも手にも触れる場所で通用した。それが何よりの手応えだったそうです。

ところがお二人の話はここで終わりませんでした。ベンチのことを伺っていると、「つるつる、うねうね」という聞き慣れない言葉が何度も飛び出してきたのです。曲線の手触りはなぜ気持ちいいのか。同僚と二人でそれを分析するように話し込むうちに、ベンチは一つの製品の種になっていきました。

次回は、そのベンチから生まれた製品「ROOTS(ルーツ)」の誕生の裏側です。始まりは、1時間ほどの雑談でした。つるつる、うねうねの正体とは何だったのか。きれいな成功談ではない、寄り道だらけの開発の舞台裏を、担当者の言葉でお楽しみください。

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