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前回のコラムでは、5軸CNCの導入をきっかけに生まれた「3D職人」という仕事について、営業開発課 3D職人チーフの嶋村さんに話を聞きました。図面を「つくれる状態」に翻訳する。それが3D職人の役割です。
今回はその続編です。いまは学生のうちから3Dソフトを使いこなす人も珍しくありません。それでも3DCADを触れることと、3D職人であることは違います。
学生の3DCADと実務の3DCADは何が違うのか。パソコンの前だけではない日々の仕事。少人数の開発課ならではの環境。前回よりもう一歩、3D職人の仕事の中身に踏み込みます。
名刺の肩書きに「3D職人」と書いているんですが、けっこう食いつかれることが多くて。「職人さんなんですか?」とよく言われます。
そのときは、「工房で機械を触って物をつくる一般的な職人とは違って、3Dソフトを使ってものづくりに携わっているという意味で職人なんです。」と説明するようにしています。
学生が3DCADを使うのは、プレゼンボードをつくったり、レンダリングしてパースをつくったりするのがメインだと思います。形にするとしても、スチレンボードでつくる模型です。
なので、実際の建材、たとえば木材の仕口をどう加工するかというところまでは、そもそも考える必要がないんです。実物をつくるわけではないので。
うちの仕事は、本物の素材でつくり切るところまでやることです。素材の特性や材料の規格を知っていて、実際の素材を使うことを前提に3DCADでモデルを起こす必要があります。つくり方を考え、材料の特性を知ったうえでモデリングする。家具職人と考え方もやっていることも近いので、「3D職人」と名乗っています。

入社してわりとすぐ、サウナのデザイン提案をさせてもらう機会がありました。自社の技術でやれることはなんとなくわかっていたので、うちの技術で実現できそうな提案をお客さんにしたんです。
そうしたら「これってどうやってつくるんですか」「どうやって持たせるんですか」と聞かれて、その場で答えられなかった。そのときは、まだ具体的には考えていないけど、職人さんと話せばこれから決まっていくだろう、というふわっとした気持ちでした。
でも、お客さんからしたら、本当にできるのか不安ですよね。それでは、ただ絵を描いているだけになってしまう。自社でつくるのであれば、モデリングやデザインの時点で、どうやってつくるかまで考えておかないといけない。それまでやってきた「デザインを見せるための3DCAD」と、実務の3DCADは違うんだと、そのとき気づきました。
デザイン提案のときは、学生のときと同じように、木目の表現やリアルなパースを心がけています。でも、つくるフェーズに入ったら、求められるのは写真のようなきれいさではありません。つくるための図面や資料です。そのときは、わかりやすさを重視しています。
3D形状には、2Dの図面では見えない収まりや、複雑な部材の分割がたくさんあります。職人さんがつくるときに必要な寸法は何なのかを把握して、色分けしたり見せ方を工夫したり。同じ3DCADでも、見せ方はまったく違うと思います。

自分の手で実際に物をつくってみる経験は大事だと思います。つくろうとするものの強度を考えたり、実際に使う人のことを考えたり。
お客さんから来た図面をそのままつくるのは簡単です。でも、もっと使い勝手がよくなるにはどうしたらいいか、強度的に強くなるかを提案できる。そのためには、3DCADだけ触っているのではなく、手を動かしてものをつくってみた経験が実務で役に立つと思います。
自分は、あまり時間で区切って仕事をしていないんです。やらないといけないことを同時に進めることが多くて。
案件にはいろんなフェーズがあります。デザインのフェーズは、自分が集中して作業を続ければ進みます。でもその間にも、製作中の案件について工場の人から「ここの寸法どうなってる?」「このデータがほしい」と急に声がかかる。時間で区切っていたら、そういう要望にスムーズに応えられないんです。
だから、時間のかかるレンダリングを回している間に別の作業をしたり、デザインで行き詰まったときに別のことを進めたり。少し疲れたら、休憩がてら工場へ行って、つくっているものの進捗を確認したりもします。
歩きながらも、頭の中ではデザインのことを考えています。常にマルチタスクで、隙間に細かい仕事を差し込みながら1日を過ごしている感じです。
3D職人の仕事場は、パソコンの前だけではありません。工場を歩き、職人さんと言葉を交わし、実物の進み具合を自分の目で確かめることもします。

アーティストリーの仕事は、単品・短納期の特注品が中心です。最近は業界大手の企業からの案件も増えていますが、それを担う3D職人は4人です。
難易度や納期によって全然違うので、数字にするのは難しいんですけど。前回のコラムでもお話しした、6mの丸太を使った「いっぽんもん」でいうと、構想から提案書づくりまでは1ヶ月もないくらいでした。ほかのメンバーと協力しながら見積もりもして、そこから案件が決まって製作に入りました。現場の施工は1週間です。
4月中旬にデザインをスタートして、納期が翌年の1月。およそ9ヶ月で納めた事例です。ずっとその案件だけをやっていたわけではなく、多いときは同時に10件くらいの案件を持っています。それがどんどん入れ替わりながら、つくっては納めて、を繰り返しています。
他の会社に就職したことがないので比べられないんですけど、スピード感は速いと思います。
たくさんの案件がある中で、ほかの工程や関係者のスケジュールを滞らせないためには、自分のリソースをどの時期にどれだけ割くか。それを常に把握しながら進めていかないといけません。アーティストリーでは、自分自身のスケジューリングや、関係者とのプロジェクトマネジメントが常に求められると思います。
前例がない案件や、やったことのない加工のような難しい仕事がちょくちょくあります。そのときは、どうやったら収められるか、今までにないやり方を一から考えないといけない。やれるかわからないけど考える、という仕事が多いのは、ほかの会社と比べて大変なところだと思います。
でもその分、新しいことができるし、チャレンジできる。大変なところは、同時に面白いところでもあると思います。
アーティストリーの企業ミッションは「Art is Try」です。常に挑戦と技術革新を続けることを掲げています。やれるかわからなくても、まず考えてみるんです。
お客さんから3Dモデルを支給されて、「その通りにつくってください」と言われることもあります。でも、モデルを信じすぎないほうがいい。そう思っています。
木は特に、伸び縮みがあったり、割れのリスクがあったりします。3DCAD上ではきれいに見えていても、実際につくって少し時間が経ったら割れてくる。モデルでは表現できない素材の特性や経年変化は、素材によっては必ずあるんです。そこを加味して3DCADの時点でモデリングしておいたり、木工のプロとしてお客さんに提案したりすることは必ず必要だと思います。
現場で躯体と取り合う場合も同じです。建築の精度は現場に入るまでわからないことがあるし、事前に現地調査が必要なこともある。もし現場で寸法が違っていたらどう調整するかまで考えて、あらかじめ余白を残しておくこともあります。
ほかにも、木材には規格寸法があるので、その規格で収まるかどうか。木目の入り方はパースと同じにはならない、ということもあります。そこまでは、うちで働いていないとなかなかイメージできないと思います。だからこそ、そういう部分は積極的に提案して、現実的で、より良いものができるように考えています。
画面の上では、木は反らず、割れず、現場の寸法もぴたりと合います。でも現実はそうではありません。そのずれを知っていて、先回りして埋めていくこと。
つくる前にそのずれに気づき、お客さんに提案できるかどうか。そこが、3DCADを触れる人と3D職人を分けるところです。

やっぱり、実際に物をつくるのが好きな人だと思います。
3Dソフトだけ触っていても、難しい造形はつくれるようになるかもしれません。でも実際にものをつくるとなったら、手を動かす職人さんとのコミュニケーションも必要になるし、職人さんの目線でモデリングしないといけない。
たまに、モデリングが好きで、自分がモデリングできたらそれで満足、という人もいます。でもその先まで目を向けて、実際に完成するところにこだわりを持てる人。ものが完成するまでを楽しみに見届けられる人が、向いているんじゃないかなと思います。

アーティストリーは「感動を二度つくる木工集団」です。その感動を、図面の段階から支えているのが3D職人です。
自分のモデルが本物になるところまで見届けたい方。前例のない仕事を、面白がれる方。アーティストリーで、一緒に3D職人として働きませんか。
アーティストリーでは、学生のインターンシップも受け入れています。3D職人の仕事を間近で見てみたい方は、ぜひ一度お越しください。