創 / Process
8分で読める
「ソラノキ」を構成しているのは、平面的な板材だけです。曲面を削り出したわけでも、複雑な立体加工を重ねたわけでもない。それなのに、見上げると確かに一本の木が空へ伸びていく。その仕掛けを、設計を担当した開発課の佐野さんに聞きました。



佐野:「ウッドツリー」というざっくりした内容だけがあったんです。どうやったら木みたいに見えるかなと考えて、根っこを表現してみようと思いました。クリスマスツリーとか想像してもらったらいいんですけど、通常根っこまで表現されることってあんまりないんですよね。また螺旋状に広がっている意匠にも意図があって、長いものほどカーブしているのですがこれは枝の「たわみ」を表現しています。そういった細部のディテールで差別化できたんじゃないかなと思います。
佐野:結構違いますね(笑)最初はもっとカーブが強かったですね。あと完成形は40本ですけど、当初は1.5倍くらい、60本を想定していました。


佐野:予算もありますし、植栽も絡んでくるのでメンテナンスのしやすさだったり、エントランスに設置されるということで安全なものを作らないといけない。いろいろ加味したらこの形状になりました。
佐野:グラスホッパーというプログラミングソフトでデザインしていて、本数も何パターンか検証したうえで、一番きれいな形になったのが40本だったんです。40本だと四方のちょうど真ん中にルーバーが来るのと、スパンも程よくて。
佐野:真ん中に植栽のポットが入るので、その希望寸法を日比谷花壇さんから伝えてもらって、その寸法に合わせてどこまで詰められるかを検証していました。






佐野:なかったです。これだけ大きいものを3Dでやろうと思うと予算的にも高くなる。だったら、いかに2Dでド派手に見せるか。平面的なもので構成しているので、植栽とのバランスもうまく取れるんじゃないかなと思って。

佐野:ありましたね。40本がルーバーのように配置されているんですけど、1本1本の厚みが30mmもないくらいなのに対して、長さは2m50cmくらいまであるんです。長いものほどカーブが大きいので不安でした。


佐野:螺旋状の意匠になっているので、それに応じて補強の材を間に入れています。台形のコマみたいなパーツなんですけど、それをうまく配置して全部補強しています。


佐野:デザインの一部でもあるんですが、作りの面でもすごく効率化できた部分で。螺旋状に配置することで全パーツを同じ角度で作れるので、製造の効率化にもなりましたし、補強材だからといって意匠を崩すわけでもなく、意匠の一部として機能しているようなものになっています。




佐野:ルーバー1本につき、土台の部分、植栽が入る筒の部分、補強材の部分の3か所で止めてあるんですけど、その位置を正確に出すのが難しかったですね。1本1本カーブ具合も違いますし、実は幅も1本ずつ違うので。


佐野:歩留まりです。作るときに木を無駄にしたくなくて。短いものはわりとまっすぐなんですが、長くなるほど外に大きく曲がっていく形なので、曲がっていればいるほど木の無駄な部分が出てくる。できるだけ幅を狭くすることで、無駄が出ないようにしています。最初と最後の幅だけ決めて、幅のグラデーションをかけていきました。


佐野:5軸加工です。1本1本正確に位置を出す必要があったのですが、それを精度よく出してくれました。


佐野:多摩産材を使っているのですが、完成品の厚みが30mmくらいで、その規格がなかったんです。なので厚み方向に貼り合わせて作っていて、それをきれいにならしてくれたり。あとは5軸で出した位置も組み立てていくと、木の反りなどによって少し違ったりするので、そこは職人さんが調整してくれました。

佐野:半分に割って持っていきました。奥行き方向で半分にして、現場でルーバーが半々になっているところを合わせて、土台も合わせています。サイズも大きいので一発では入らないと分かっていたので、そういう設計にしていました。
佐野:製作自体は1、2か月ですね。お問い合わせをいただいてから納品までとなると、5か月ほどでした。

佐野:設置は1日です。その翌日に、日比谷花壇さんが生け込みをされています。
佐野:塗装をお願いしているPitさんという社外の塗装屋さんがあるんですけど、すごく気持ちを込めてくれて。普段は辛口の職人さんですが、「これ塗るの大変だったけど、久しぶりに楽しいやつが来た」と言ってくれたりして。社内だけじゃなく、社外の方ともうまく絡んでやっていけたのはよかったですね。
塗装を担当したPitさんにも、お話を聞きました。
Pitさん:デザイン的にはすごく綺麗だなと思って。だから綺麗に塗りたいなと思ったんだけど、塗るのがすごく難しい。
Pitさん:要は隙間が狭いんですよ。隙間が狭くて奥行きがあるから、普通に塗るとザラザラになるし、塗れないところが出てくる。小指が入らないところもあったりするから、そういうのをどうやって塗ろうかなって考えながら。だから、「楽しくは塗ってた」という感じですかね。
歩留まりまで計算した1本ごとの幅、意匠と構造を兼ねる台形の補強材、5軸加工が出す位置精度、そして小指も入らない隙間にまで届かせる塗装職人の手。40本のヒノキは、そのすべてが噛み合ってようやく螺旋になりました。次章の『継』では、完成したソラノキが立川の街でどう迎えられたのかを追います。