働 / Artistry team
12分で読める
アーティストリーには「3D職人」という肩書きの社員がいます。この会社にしかない役割で、生まれたきっかけは、5軸CNCの導入によって現場に立ちはだかった、ある「壁」でした。この肩書きの名づけ親であり、3D職人として数多くの実績を残した嶋村さんに、その仕事の中身を聞きました。

アーティストリーが2016年に5軸CNCを導入して、3次元的な加工ができることをどんどん売り出していく中で、これまでにない形状の依頼が一気に増えました。特に2021年ごろから元請けの設計さんも3Dの有機的なデザインが爆発的に増えた感覚がありました。そうすると2D図面だけでは、職人も製作も、収まりや形状を読み取れなかったんです。


左:2019年までの業界内の立ち位置、右:2021年以降の立ち位置
図面はある。でも、これをどうつくればいいのかがわからない。その状態を解消するために、3D化して「つくれる状態」に翻訳していく必要が出てきた。それが、この役割が必要になったきっかけです。
言葉が生まれる前から、やっていること自体は変わりませんでした。「3Dオペレーター」とか「3D担当」とか、なんとなく呼ばれていただけで、職種としては決まっていなかったんです。
入社して1年くらい経った頃に、部署の中で「名刺の肩書きを変えよう」という話が出ました。それまでは全員が「営業開発課」でひとくくり。でも課の中では、それぞれ役割がはっきり分かれている。だったらそれを表す言葉がほしいなと思って、自分で考えたのが「3D職人」でした。

アーティストリーで3Dを触るというのは、「家具をつくる職人と同じこと」なんです。材料の規格はどうなっているか、加工する機械や道具で何ができるか、どうやったらつくりやすいか、そもそもつくれるのか。クリアランスをどれだけ見るか。そういったことを考えながら元請けの意匠設計の3Dを実施図面に書き落としていきます。
職人がものをつくるために考えていることを、そのままモデリングに取り込んでいく。触っているのが実際の木材ではなくモデリングソフトだというだけで、頭の中で考えていることは家具職人と変わりません。だから「3D職人」なんです。
僕自身、学生の頃から3Dモデルは触っていました。でも学生のうちは、実際にものをつくる経験はあまりない。設計事務所も、お客様にビジュアルとして提案するためのモデリングが中心になることが多いと思います。


つくり方や細かい収まりまで詰めた、本当に「つくれる」モデリングをやっているところは、そう多くないはずです。パース用の3Dモデルを作れる人はいたが、製作図面化の3Dのプロはいなかったんです。アーティストリーは、自社でモデリングしたものを自社でつくる。「提案パースのためにつくったモデルが、そのまま製造に生きていく。」これは他の会社にはない3Dの使い方だと思います。製造に精通した3D職人として他社様から3D代行のような仕事の依頼も増えっていってます。
3Dを触っている人というと、完成したときの見た目にこだわっている人、と思われがちです。でも実際は、もっと手前の段階から動いています。
たとえば見積もり。必要な材料の量やパーツ数を出すとき、2D図面だとざっくりとしか拾えないところがあります。そこで簡単に3Dを立ち上げてしまう。それだけで見積もりの精度が上がりますし、その段階で「この図面のここに問題がありますよ」と指摘することもできる。アーティストリーが使用しているライノセラスというソフトウェアは、こうした作業を大幅に省力化できる機能があるので、案件が決まる前から3Dで考えるということをよくやっています。
いちばん喜ばれるのは、ご要望が予算に合わないときですね。「この金額になります」と提示して終わりにせず、「こういう形にすれば予算に近づきます」というのを、具体的にモデリングしてお見せする。お客様は普段からバリバリ3Dを触っているわけではないので、得意な僕らが設計さんやデザイナーさんを補助する形で案件が進んでいくことが多いです。

収まりや仕様も、こちらから「こうやるのがいいと思います」と提案してしまう。お客様は採用するかどうかを判断するだけでよくなるので、お客様の時間も浮きますし、うちとしてもつくりやすいやり方で進められる。お互いにとっていい形になります。
見積もりの段階で、思い描いていた3D形状が「実現できる」と知ったときの感動。
そして、実際に完成し、思い描いていたものが形になったときの感動。
私たちは、その二つの感動を生み出すことができる。
「感動を二度つくる木工集団」なんです。


左:知床のサウナ「UNEUNA」「KAKUUNA」、右:「ルスツリゾートホテル ドライサウナ」
最近はデザインから依頼をいただくことも増えました。きっかけは、知床のサウナ「UNEUNA」「KAKUUNA」です。あの複雑な形状をつくりきったことで「面白いサウナをつくれる会社がある」と口コミが広がり、「デザインからお願いできますか」という問い合わせが届くようになりました。そこから生まれたのが「ルスツリゾートホテル&コンベンション ウェルネスルーム・プレミアムスイートルーム ドライサウナ」です。
それまで自社でデザインをやったことはありませんでした。でも、うちには「ART IS TRY」というバリューミッションがあります。やったことがなくてもチャレンジするのはずっとやってきたことなので、やってみようと。「つくれる会社」から「デザインを任される会社」に変わった瞬間だったと思います。
ちなみに、県産材を利用したデザイン案件の第一号は愛知県公館でした。しかも、これはお客様から直接ご依頼をいただいたものではなく、県が公募していたプロポーザルに、こちらから提案書をつくって応募したものが見事に採用されました。
デザインするときの強みは、社内で5軸CNCや職人の技を毎日目の前で見ているので、何ができて何ができないかを熟知していることです。だから、社外のデザイナーさんなら手を出さないような表現にも踏み込めます。
そういった実績の積み重ねで「あの3D形状のやつアーティストリーさんがやったんですか?」と自分たちがやってないものまでそういったことを言われることが増えました(笑)

昨年のプロポーザルでは「いっぽん門 東三河総合庁舎木質化事業」では、6メートルの丸太を軽量化するために5軸CNCを使いました。それを社外のデザイナーさんに見せたら「思いついても、これを実現しようとは思わない」と言われたんです。僕からすると、5軸に6メートルの丸太が入ることも、刃物の長さの制限も全部わかった上で提案しているので、実現できる確信があった。でも外から見ると、どうつくるのか想像もつかないものだったんだな、と。
社内に3D職人がいるからこそ提案できた案件でしたし、それを実際に形にすることで、社外のデザイナーさんに「アーティストリーはこういうこともできる」と新しい表現の選択肢を示すことにもなったと思っています。実際、「今までにないワクワクする木の表現をしてほしい」という問い合わせは、確実に増えています。
普段は職人や5軸のオペレーターと、本当に密にコミュニケーションを取りながら進めています。
面白いのは、同じものをつくるのにも道が何本もあることです。3D職人としてはAのやり方が一番ラク。でも5軸のオペレーターからするとBがいい。職人からするとCがいい。この中でトータルとして一番いいもの、一番早くできるもの、一番きれいに仕上がるもの——それは納期によっても変わります。三者で話し合いながら、その都度いちばんいい答えを決めていく。3D職人がその意見を吸い上げて最適解な設計をすることが求められます。

社内のベテラン達も「こんなの見積もるんですか?」というくらい複雑な相談が来たり、最初はどうつくるのか見当もつかないものを、実際にやることになったりします。それを職人や5軸、製作のメンバーと話し合いながら進めて、自分がモデリングしたものが目の前でどんどん形になっていく。完成したときの「おおっ」という感覚は、見積もりの段階から関わっている3D職人だからこそ大きいと思います。難しければ難しいほど、達成感があります。
外部のプロデザイナーが頼んできた案件が目の前でつくられて、納品されていく。設計事務所にいたら、自社で目の前でものがつくられていく光景を毎日見ることはないはずです。それを体感しながらものづくりができるのは、この会社ならではのやりがいであり、面白さだと思います。
今後、生成AIによって誰もが立体的なデザインを考案できる時代が到来しても、それを物理的な形にする、特に「単品・短納期」×「誰もやったことのないデザイン」という条件下で実現する技術力は代替不可能で、「3D職人」の重要性は高まっていくんじゃないかなと思います。
「3D職人」は、まだこの会社にしかない役割です。木という素材への理解と、「どうすればつくれるか」を考え抜く執着心。その両方を面白がれる人を、アーティストリーは探しています。経験の有無より、ものづくりの現場を面白がれるかどうか。この記事に少しでも心が動いた方は、ぜひ私たちと一緒に「感動を二度つくる」仕事をしてみませんか。